ES経営が中小企業を強くする!

労務管理情報(2)


猪(い)〜年(とし)社労士@小野寺(おやじ)の労務管理情報
第2回 働き方改革で注目を集める勤務間インターバル/テレワークの実務対応(その1)


今や春闘がたけなわですが、賃上げ闘争と相まって「働き方改革」についても着実に成果をあげているようです。例えば、日立製作所では、退社から次の出社まで最低11時間空ける「勤務間インターバル制度」を始めて導入することになりました。
パナソニックは介護や子どもの学校行事への参加などを理由とした有給休暇を時間単位で取得できるようにする。
三菱電機は不妊治療のための1か月以上1年以内の休職制度を設ける等々。


2016年9月、安倍首相は「働き方改革実現会議」第1回会合において、同会議で取り上げていくテーマとして、

  1. 同一労働同一賃金など非正規雇用の処遇改善
  2. 賃金引上げと労働生産性の向上
  3. 時間外労働の上限規制の在り方など長時間労働の是正
  4. 雇用吸収力の高い産業への転職・再就職支援、人材育成、格差を固定化させない教育の問題
  5. テレワーク、副業・兼業といった柔軟な働き方
  6. 働き方に中立的な社会保障制度・税制など女性・若者が活躍しやすい環境整備
  7. 高齢者の就業促進
  8. 病気の治療、子育て・介護と仕事の両立
  9. 外国人材の受入れの問題、を掲げました。
     このうち、1については2016年12月20日に『同一労働同一賃金ガイドライン案』が示され、今後、改正法案(労働契約法、パートタイム労働法、労働者派遣法)についての国会審議を踏まえて確定し、改正法の施行日に施行されることとなっており、それ以外の主要項目については2017年3月中にモデル就業規則やガイドライン等が盛り込まれた『実行計画』が取りまとめられる方針が示されています。

     ここでは、上記テーマのうち労務管理実務への影響が大きく、導入企業も増加傾向にある「勤務間インターバル」や「テレワーク」についての法的留意点や実務上のポイント等を解説します。

勤務間インターバル制度に係る制度設計と就業規則  

「勤務間インターバル」をめぐる最近の動向  

長時間労働がもたらす弊害に対する有効な対応であること  

  • 現在、電通の過労自殺事件などの背景もあり、長時間労働の是正に向けての大きな流れがある。長時間労働がもたらす弊害としては、
  1. 労働者の健康(脳・心臓疾患や精神疾患)への影響(注1)
  2. 仕事と家庭生活の調和の欠如、
    などが挙げられています。

(注1) 判例においても、労働者が労働日に長時間にわたり業務に従事する状況が継続するなどして、疲労や心理的負荷等が過度に蓄積すると、労働者の心身の健康を損なう危険のあることは、周知のところである(平12.03.24.最高裁第二小法廷判決)と解されており、脳・心臓疾患についての業務起因性の認定基準を定めた通達である「脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く。)の認定基準について」でも、「発症前1か月間におおむね100時間又は発症前2か月間ないし6か月間にわたって、1か月当たりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合は、業務と発症との関連性が強いと評価できる」として、長時間労働を脳・心臓疾患発祥の重要な要因の1つとして位置付けている。
また、精神疾患についての業務起因性の認定基準を定めた通達である「心理的負荷による精神障害の認定基準について」においても、長時間労働に従事することが精神障害発病の原因となることが明記されている。

  • そして、1の労働者の健康への影響という観点(会社は従業員の健康を損なわないように安全配慮義務を負担している。)からすれば、休息をとり、必要な睡眠時間を確保できるよう配慮することは極めて重要なことです。
    こうした「休息」、「必要な睡眠時間」の確保という側面からは、勤務間インターバルによって「労働」と「労働」との間に一定の間隔を設けるという手法は合理的なものといえます。
  • さらに、こうした勤務間インターバルは、使用者にとってもメリットがある。すなわち、不幸にして、労働者から長時間労働によって脳・心臓疾患や精神疾患が惹起されたと主張された場合であっても、適切な内容の勤務間インターバル制度を採用していたとすれば、適切な「休息」や「必要な睡眠時間」が確保されていたわけであるため、労災認定において「業務起因性」がない(他に業務外の要因が存在す
    るとの認)、あるいは、使用者の安全配慮義務という観点からも義務違反がない、と判断される可能性があります。その意味でも、勤務間インターバルの採用は、使用者にとっての労働災害対策になるという
    側面も認められると言えます。
  • 厚生労働省は、勤務終了から始業までの休息時間を「9時間以上」とする勤務間インターバルを新たに導入する中小企業を対象とした助成金制度を設け、勤務間インターバルの導入に要する経費を助成する
    制度を2017年から開始した(注2)。

    以上からわかるように、現在の流れは勤務間インターバルの法制化というよりも、各企業による任意の取組みを促していくという方向性にあるといえる。

(注2)「職場意識改善助成金交付要綱(勤務間インターバル導入コース)」
*以下の1から3のいずれかに該当する場合が、助成金の支給対象とされている。

  1.  新たに当該事業場に所属する労働者の半数を超える労働者を対象として、休息時間数が9時間以上の勤務間インターバルを導入すること。
  2.  すでに休息時間数が9時間以上の勤務間インターバルを導入している事業場であって、対象となる労働者が当該事業場に所属する労働者の半数以下であるものについて、対象となる労働者の範囲を拡大し、当該事業場に所属する労働者の半数を超える労働者を対象とすること。
  3.  すでに休息時間数が9時間未満の勤務間インターバルを導入している事業場において、当該事業場に所属する労働者の半数を超える労働者を対象として、当該休息時間数を2時間以上延長して休息時間数を9時間以上とすること。

「勤務間インターバル」とは、どのような制度か?  

  • 勤務間インターバルとは、勤務終了時刻から翌日の勤務開始時刻までの時間を一定以上確保する制度を言います(注3)。
    この制度の下では、前日の勤務終了時刻から一定の時間を空けなければ翌日の勤務を開始することができないものとされますので、勤務禁止時間が翌日の始業時刻にかかる場合には、始業時刻を繰り下げるといった対応が必要になります

(注3)「勤務間インターバル」の定義(厚生労働省)
「勤務間インターバルとは、休息時間数を問わず、就業規則等において終業から次の始業までの休息時間を確保することを定めているものを指す」(平成元年労働省告示第7号「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」など法令等で義務づけられている場合を含む。)。
 なお、就業規則等において、0時以降の残業を禁止、0時以降の始業を禁止するなどの定めのみの場合には、勤務間インターバルを導入していないものとする。

  • このような制度は、欧州連合(EU)で採用されており、EU加盟諸国では、1993年に制定され、2000年に改訂されたEU労働時間指令に基づき、24時間につき最低連続11時間の休息時間を付与することや、7日ごとに最低連続24時間の休息を付与することなどが義務付けられています。

企業における導入事例  

各社での導入状況  

  • 勤務間インターバルの導入については、労働組合から時短要求の一環として求めるケースが多い。そして、みずほ情報総研株式会社による「平成27年度厚生労働省委託 過労死等に関する実態把握のための社会面の調査研究事業 報告書(平成28年3月)」(以下「みずほ情報総研報告書」という。)では、
    民間企業(団体を含む。)10,154社を対象に行ったアンケートに回答した1,743社のうち、勤務間インターバルを導入していると回答した企業は39社あり、そのうちインターバル時間を「7時間超8時間以下」とする企業が28.2%で最も多く、次いで「12時間超」が15.4%、「11時間超12時間以下」が12.8%という結果でした。
  • しかし、この勤務間インターバルに関しては現在、法令上の規制が存在せず、どのような制度設計とするのかは会社が自由に決めることができます。
    インターバル自体を強制的な就業制限とするのか、努力目標に留めるか、就業規則などに定めをおくのか、対象とする従業員の範囲をどうするか、インターバルが翌日の始業時刻を超えた場合に、翌日の就業時間や賃金をどのように設定するのかなど、さまざまな事項について検討する必要がありますが、会社の実情に応じて多様な制度設計が考えられます。

KDDIの導入事例  

  • KDDIでは、強制的な就業規則を伴うインターバルと、そこまではしないインターバルの2本立ての制度をとっています。
  1. 就業規則の定め(8時間インターバル)
    8時間のインターバルが経過するまでは就業を禁止し、前日の残業時間次第では、インターバルが翌日の始業時刻を超えることになります。その場合には、始業時刻を遅らせ、遅らせた時間に応じて業時刻も同様に遅らせます。
  2. 安全衛生管理規程の定め(11時間インターバル)
    インターバルが11時間未満となった場合でも、1のような強制的な就業制限まではしません。ただし、11時間未満となった日が1か月当たり11日以上となった場合には、健康指導や産業医面談などの対応がとられる。
<以下、次回へ続く>

powered by Quick Homepage Maker 3.71
based on PukiWiki 1.4.7 License is GPL. QHM

最新の更新 RSS  Valid XHTML 1.0 Transitional